安 野 モ ヨ コ
 



『ジェリー イン ザ メリィゴーラウンド』
CUTiEの連載作で、キャラ達の服装が皆お洒落で可愛い。
ハイテンションなノリツッコミやミニコント、
某キャラのボケっぷりに胸ときめかされるシュール劇みたいなコメディですが、
実はそれぞれ皆マイウェイの探求者達なのです。
中身もつまっているです。


『ハッピーマニア』
安野キャラのハイテンションな寸劇尽しで、クセになる面白さ。
でもそんな登場人物達のセリフが、時折ざっくりと核心をつく。
そして足元に転がっているのに見えない、手の中にあるのに掴めない、
主人公にとっての幸せとは何ぞや、と何だか果てしないテーマが描いてあるのです。
文学チックな読後感。


『働きマン』
仕事って、働くって何だろう。
そんな普遍的なテーマを描いたこの漫画、
素朴に良いです。
労働って、本来喜びだと思うのです。
義務じゃなくて権利だと思うのです。





 大塚英志/田島昭宇
 



『多重人格探偵サイコ』
コピー人格のバーコード達や殺人機械としてプログラムされた弖虎を通して人間存在の意味
を問う、みたいな何だか捻くれたアプローチが壷。
ルーシーの甥、仔池が日本に入る時に他人の鬼頭のパスポートで入国できちゃうのですが、
「 相手の脳に鬼頭という人間を見せてやった 」と彼は言います。
実際の話、これと似たようなことをできてしまう人間が、現実にもいると思うわけです。
催眠術とはまた別の…(でも結果的には同じですか)。
この漫画で言っているのはまた違うことの様でもあるけれど、元は同じことの様な気がするのです。
「バナナフィッシュ-」のシーモアもそういう人物だったんじゃないかという気がするし、
それは下に書いた蜜やKの感応性ともまた似ている。





 岡 田 あ ー み ん
 



『お父さんは心配性』
子供の頃、どこで読むにも笑いを堪えるのに腹筋が痛くなった思い出が忘れられません。
少女漫画誌の中でひときわ異彩を放つ魔のギャグ漫画でした。
いつの間にコミックスを買ってしまったのか覚えていないのが不思議ですが、
読むと今でも堪らないのです、腹筋が。
ルナティックの中にあるヒューマニティだったり、時々登場するスキゾチックな作者自身…
鬼才です。
「なかよし」でも「マーガレット」でもなく、「りぼん」を読んでいて良かった。


『こいつら100%伝説』
私の中でナンバーワンギャグコミックです。
アブノーマルな忍者の主人公達は、日常生活の疲れを癒してくれる救い(笑い)の神です。
危脳丸(班長の忍者)というネーミングセンスからして堪りません。
若いのに落ち着いている極丸(福班長)は、いつもあわてずクールな対応が素敵な男性です。
ところで作者は実は女性(美人さん)だったと、最近知りました。
今は結婚して、旦那さまと京都の漬け物屋を営んでいるという噂ですが、
漫画界カムバックを願わずにいられません。





 楠 本 ま き
 



『KISSxxxx』
学生時代、学校に遅刻してしまった私はぐうたらに自転車を漕いでいました。
途中、何となく目について立ち寄った古本屋で見つけた本がこれでした。
ちらと立ち読みして、一目惚れしました。
神経質な細い描線に立体的な陰影がゴシックで、
点々とある詩的な散文には全く贅肉がなくて、
人物達の醸す笑いが奇妙で絶妙で可愛くて……何じゃこりゃと思いました。
だてに公房好きじゃないなという作者のシュールで哲学な一話々々。
なのにほのぼの。
こんな世界があったらいいなー、ないかな、あったら住人になりたいなー、
と思い続けていることは、
何だか白いタイツをはいた王子様を待ち続けるいたいけな乙女に似ている気がして、
誰にも話したことはありません。
内緒です。


『T.V.eye』+「カメラ・オブスキュラ」+「ch-11」
ほんのり難解な、三編のオムニバス。「ch-11」が好き。


『Kの葬列』
「KISSxxxx」と同じくらい好き。 トラとコメの割合が程よくて心地良いのです。
主人公の青年が越して来たアパートの住人達は、みな曲者の変人で、
特に追跡妄想の管理人と肉屋のとぼけ具合が、最高に滑稽で可笑しい。
片や虚言癖の少女やおかまの老人の科白はアフォリズムめいていて、
どこまでも哲学な楠本作品。

「 主観の相違ね 」

「 夢の中に彼が出てきたので、私は彼に恋をした 」

鏡みたいなKの人物像は、ドーリスの蜜とも重なる。
そして物語のカタストロフィがくれるのは禁忌に近いカタルシス。
ゴシック耽美で、ヘッセ的な文学の香り高い作品。名作です。


『致死量ドーリス』
ドーリスとは”理想の少女”。
境界性パーソナリティ障害(BPD)と共依存が完璧に描かれた破滅的な物語。
昔の洋画みたいな雰囲気もあってお洒落だけど、
『Kの葬列』と同時進行で描かれたこの辺りの作品は、病的なまでに審美的で芸術的で、
鬼気迫るものがあります。
しかも悲劇に徹した本作は、読み終えた後、途方も無くやるかたなくなるのです。
永遠のドーリスになった蜜と、モノローグが素敵に文学している岸くんと。


『乾からびた胎児』
作者にしてはライトで、何とはなしに物足りないような?
重たいテーマの割にあっさり終わったというか、もうひとつまとまりがないような…。





 玉 井 雪 雄
 



『OMEGA TRIBE-オメガトライブ-』 [BIG COMICS/小学館
潜在意識だとか集合意識だとか遺伝子だとか、個人的に好みの要素満載の漫画です。
しかも滅茶苦茶ワールドワイド。
全体の雰囲気や面白さは何となく『寄生獣』を思い出しますが、
生命(種)は孤独を感じると本能で性的欲求が高まるという説に深く納得したのでした。
そしてこういう例は一度経験したきりですが、
例えばガラスの割れる瞬間というのは、本当に世界がスローモーションのコマ送りになる。
あんな具合に脳のクロックアップ(高速回転)が自在にできれば面白いだろうなと思う。
でも脳は危機的状況でそのスイッチが入るようなので、それはそれで大変そうです。





 に ざ か な
 



『B.B.Joker』
ダジャレの連打でぐでんぐでんになれる4コマ。
ブラックなネタなのに可愛くて綺麗で真顔な絵、というのが堪らなく素敵です。
ランキングではなぜか不人気ですが、「夫婦な二人」の今日子さんの黒さに、
師匠ー!と私は思わず叫びたくなります。
でもブラックホール的な黒さでは「ふしぎなおとな」も負けてません。
いつ何時でも浮かんでる、あの微笑みがサイコさんの印。





 山 本 英 夫
 



『ホムンクルス』 [BIG SPIRITS COMICS/小学館
トレパネーション(頭蓋穿孔-ズガイセンコウ-)で額に穴を開けてシックスセンスを開眼した、
推定34歳、元銀行員?、現カーホームレスの名越。
初めて”ホムンクルス”が出た時は、ああきちゃったかな、おかしくなっちゃったかな、
とちょっと飛躍した展開を期待しましたが、意外と論理的かつ現実的な展開に。
狂ってないどころか、何だかむしろ正常に見える、被験体の名越と施術者の伊藤です。
イタコやスキゾフレニアの言葉は支離滅裂なようでいて、
中に暗号のように事実が含まれているのと同じことなのか、
潜在意識(無意識)=空=アカシックレコード(ユングの集合意識)、という図式が浮かびます。
主観の生き物である人間は、基本的に自分の中に持っている感覚しか他人に投影できない。
目に映る景色はいつも自分の中にある景色。
繊細な心理描写や空気感もアダルティーな漫画です。



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